Tuesday, April 15, 2014

PCR用酵素 その2



前回(PCR用酵素 その1)からの続きです。

PCR用酵素を4つのグループに分けて紹介しています。
後半の2グループです。


第3グループ
目的: あまりエラーが起こってほしくないPCR用。
用途: 遺伝子のクローニング。点変異の導入やキメラ遺伝子作成時の1st PCR。

これも使用頻度の高いグループです。精製されたDNAをテンプレートに遺伝子をクローニングしたり改変遺伝子を作成するときなどに使っています。mRNAから逆転写したcDNAのプールから目的のDNAのみを増幅する際などにも使います。

このグループの製品はTaqポリメラーゼと校正機能付きポリメラーゼがブレンドされたものです。Taqによる増幅効率を落とさずに校正機能付きポリメラーゼがPCRエラーを修復してくれるので比較的高収率低エラーの産物が得られます。

TAKARA ExTaq

TAKARAのExTaq、NEBのOneTaq、PromegaのGoTaq Long, LifeTechnologiesのAccuPrime Taqポリメラーゼなどです。

この中でも代表格はTAKARAのExTaqポリメラーゼでしょう。日本では圧倒的なシェアをだと思います。お持ちの研究室も多いでしょう。他社製品も頑張っていまずがなかなかその牙城は崩せないみたいです。肝は2つの酵素の配合率だそうで、抜群のブレンドが高い収率と正確性を生み出しています。

僕は初めて扱うサンプルでPCRを行うときはまずExTaqを使って試しています。特別に長いDNAやGCリッチでない限り、これで増えない時は他の酵素でも増えないからです。とりあえずExTaqに任せておけばなんとかしてくれます。研究室に1本あって困らない製品でしょう。

第4グループ
目的: 絶対にエラーを入れたくないPCR用
用途: 遺伝子のクローニング。点変異の導入やキメラ遺伝子作成時の2nd PCR。RNAプローブ作成用テンプレート増幅。

校正活性の高いポリメラーゼです。Taqポリメラーゼとくらべ十数倍~数十倍の正確性を持っています。代表的なものはPfuやPhushionポリメラーゼ です。一般に校正活性が高い酵素はPCRエラーを修正しながら増幅を行うのでその分増幅効率が落ちてしまいます。しかし近年の酵素の改良で増幅効率もかなり良くなっています。

Finnzymes/NEB Phusion polymerase

このグループの酵素も基本的には精製されたDNAをテンプレートに用います。PCRエラーによる塩基置換が絶対に起こってほしくないときに使います。遺伝子のクローニング用に使用すればPCRエラーのない正確性の高い産物を得ることができます。

遺伝子のクローニング以外にもクローニングした遺伝子をもとに、そのDNAの一部を他の塩基に置き換えて機能更新型や機能損失型の遺伝子を作り、遺伝子機能を調べるためのコンストラクトを作るときにも使うことができます。

このとき目的とする塩基以外にPCRエラーが起こって塩基が変わってしまうと厄介なので正確性の高い本グループの酵素を使って目的の塩基のみの置換が起こるようにします。

この方法では目的の塩基置換を持ったプライマーを使ってPCRを行い塩基置換を誘導しますが、Taqとグループ4の酵素の両方を使って行います。本方法に関しては別の機会に解説します。

TOYOBO KOD-Plus Neo

本グループの酵素で増幅した産物DNAは末端が平滑末端になります。クローニングのためには同じく平滑末端のベクターを使いますが、効率が低くベクターの調整がやや難しいのでうまくいかないことも多いです。僕は本酵素で増やした産物を更にTaqポリメラーゼで数サイクル増幅してわざとA突出にした後にTAク ローニングを行っています。


産物が平滑末端なのでRNAプローブを作成するときのテンプレートDNAを調整する時にも重宝します。RNAプローブを合成する時に使うT7 RNAポリメラーゼやSp6 RNAポリメラーゼはテンプレートDNAの下流端が平滑末端または5' 突出でなくてはなりません。

テ ンプレートを含むプラスミドを5'突出や平滑末端を作る制限酵素で切ってもいいのですが、プロモータ領域を含む形でテンプレート部分を増幅すれば毎回プラ スミドを大量に消費しなくてすみます。Taqポリメラーゼだと3' 突出になってしまうので本酵素を使って平滑末端を持つテンプレートを増幅すると便利です。

NEB Q5 polymerase. 正確性はなんとTaqの100倍!

以上4つのグループに分けてPCR酵素を紹介しました。


PCR を頻繁に行う研究ではポリメラーゼの消費量もかなり多くなります。複数の酵素を揃えるのは一見無駄なようですが、用途に応じて使用する酵素を変えると実験の効率も上がり、高い酵素を単なるチェックのために使うこともなくなるので結果的に経済性も上がります。

長くなりましたが参考までに僕が使用している酵素のラインナップを紹介します。

(第1グループ) Agilent Paq5000、
(第2グループ)NEB Taq、TAKARA rTaq
(第3グループ)TAKARA ExTaq
(第4グループ)NEB Phusion (Finnzymes/Thermo Scientificからのライセンス)

この他にTAKARA Emerald Amp(第1グループ)、TAKARA Tksポリメラーゼ (第2グループ)、TOYOBO KOD FX Neo、KOD-plus Neo、 NEB Q5 (共に第4グループ)の酵素サンプルを試しています。

PCR酵素も日進月歩なので実験系と予算に合わせ定期的に良い物を選びましょう。




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